とろけるあめ

高校生のころから書いていたこのブログを製本したところ、300ページもある分厚い本になりました。300ページそれぞれのわたしはいつも部屋でひとり、誰かが読んでくれるであろうここで文を書き、世界とつながっていました。 とても気持ちがすっきりした…

大人になっても、夜、あかりを消すと、真っ暗な宇宙に、ぽっかりと脳だけが浮かんでいるような心地になって、心細さに、涙がでる。そうして、「あっ、からだがあった。」と安心して、ほっぺの涙を乾かしながら、眠る。

作家が、自分が扱う媒体それ自体をテーマにした作品をつくることはあって、それに出会うとわたしはこころがわなわなする。 真心ブラザーズの「拝啓、ジョンレノン」の、神聖かまってちゃんの「ロックンロールは鳴り止まないっ」の、切実さ。ただ好きなものへ…

「雨だって風だって何でも着られるの。」

男の子みたいに髪を短く切っているのに、まつげをくるんと持ち上げたくなる日もある。とても大きい胸にいつもぴちぴちのリブのセーターを着る女の人を見るとちょっと引いてしまうのに、自分だって、寒い日に20デニールのタイツを履きたくなる日もある。 わた…

くやしいことがあって、家路。もし、わたしが、SNSで、痴漢被害やセクハラに関する投稿をしたとして、「おまえにはやらない」「ぶすのくせに」のような返信がきたとしたら、「わたしが歳をとっていても醜くても、女として綺麗か綺麗でないかという土俵に勝手…

わたしのアパートの近所、団地の一階部分の店舗に入った喫茶店。ブレンド一杯250円。おじさんが1人でやっていて、本棚には、バルテュスの画集や、ブラタモリや、風の立野ナウシカ全巻が並ぶ。神棚には、ブルースブラザーズのDVDがお供えしてあって、音楽は、…

このリアーナにとって肉体は、自分自身であり、味方であり、コントロールできるものなんだろうな。わたしにとって肉体は、自分から乖離しているものであり、敵であり、暴走してばかりいるものです。 わたしも、気高い動物のように美しい肉体を、踊るように、…

ミトンのすすめ

この冬に買った手袋は、ふわふわの白いミトン。最近、腹がたって、心の中で中指をたててしまうことがあり、「ああ、いけない」と思ったけれど、「あ、ミトンをつけているから、中指をたてても平気だわ」と、ほっとした。心の中の手にもミトンを着けてあげた…

わがままを言わせてもらうと、年末の紅白で、津軽海峡冬景色を歌う石川さゆりの背景に、北斎の神奈川沖浪裏が使われていて、「津軽なのに…?神奈川…?」と思ってよく見ていると、津軽からは見えるはずのない富士山は消されており、波しぶきは津軽の雪として…

わたしたちのかすがい

夜の武蔵野文庫は、すいていた。焼き林檎を食べながら読んだ本の中では、中島義道が怒っていた。破れた「れもんケーキ」のお品書きが、白熱灯の光で透けて、きれいだった。隣の席では、アパレル店員のお姉さん2人が、店の雰囲気やコーヒーには目もくれず、…

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を観た。お迎えと闘うかぐや姫のようなお話だった。もしもわたしたちにお迎えがきたとして、クボのように拒み闘うことができるのかしら。苦しみや痛みでいっぱいの世界を愛することができるのかしら。自分の物語を肯定すること…

欲望は、一番身近な他者。すきだから、近づいたのか、さみしいから、近づいたのか、わからなくなるときはある。すきだから、近づいたのか、性欲から、近づいたのか、わからなくなるときだって、あるんじゃないか。いつだって、理性的でいて、自分のことは自…

鉄棒のしずくにふたたび出会ったのは、空気人形を観たとき。心をもった空気人形、ペドゥナが、板尾創路の部屋の窓をあけて、物干し竿についたしずくを指でなぞって落としたとき。わたしのなかのうたまるが、5億点!といった。

しずく

わたしのしずくの原風景。 雨の翌日、校庭の鉄棒の下に、つららのように連なって、くっついていた、しずく。小さい鉄棒から大きい鉄棒まで、指でなぞって歩いて、落としていった。わたしがぜんぶ落とすんだから、誰もさわらないでね、とおもった。 喘息の吸…

ラーメンたべたい

女のひとと、性的な関係を結ぶ可能性がないとわかったとたんに、男のひとの態度が変わることはよくある。このとき、女のひとは友達をひとり失ったような気持ちになる。そもそも友達でもなんでもなかったのだという気持ちになる。あのひとにとっては、わたし…

わたしは、あまりたくさんの男のひとと関係をもつ女のひとの気持ちはわかりませんが、「この歌のような朝帰りの瞬間を何度も味わいたいのよ」というのが理由であるのならば、わかる。ああ、あの瞬間の空気はどうして、まるで霧がたちこめているときのように…

「わたしがわたしであること」の輪郭線をなぞるように、髪を梳かし、服をえらび、香りをまとって、口紅をひく。毎日、毎日、「わたしがわたしであること」を、たしかめている。

わたしは子どものころから団体で行う球技がとてもきらいで、球技大会などは、学校をぬけだしてさぼっていたほどなのですが、大人になってから、仕事で球技に参加しなければならないことが増えてしまい、十数年ぶりに球技がいやでたまりません。それで、どう…

帰るところのないかぐや姫

女のひとの人生は、勝手なことばかり。女のひとは、勝手に女のひとになり、勝手にからだがふっくらし、勝手に血がながれだし、勝手に性欲をいだかれ、子どもをうめば勝手に母になり、勝手に性欲をいだかれなくなり、勝手に血がとまり、勝手に女のひとでなく…

むかしから、ものごとを軽々と飛び越えていく女のひとに憧れていた。 たとえば、山本直樹の漫画の女のひと。学校の屋上で何度もセックスした男のひとからの「このまま東京まで逃げてそこで二人貧しくともつつましく暮らそう」という台詞に、「冗談でしょ?」…

のみかい沼

大人になったら、「どんなひとがすきなの?」という質問に、スマートに答えられるようになるんだろうとおもっていたのに、わたしときたら、いまも、しどろもどろしている。みなさんは、どんなふうに、答えていますか。わたしは、まず、この「どんなひと」と…

「きみのルサンチマンが小さくなるようにおまじないかけてつくったカレーだよ」と言って差し出す

感性をおしえているのに感性が わからなくなって青鞜を穿く。自転車をこぐたび透ける膝のおさらが、夕焼けの色に似ているなとおもう。 「おかあさん、いまの、ずこうの先生だよ。」 おかあさん、わたし、ふるさとをとおく離れて、知らない街で、指をさされて…

拝啓、この手紙、読んでいるあなたは、どこでなにをして、いるのだろう。という歌を、きらいだったのに、大人になると、そんな歌をうたうような気持ちになることもある。 十五のわたし、目がみえなくなる病気になることなんて、考えたことがありましたか。二…

彼から聞く言葉が仕事の愚痴ばかりなことも、別の男の人から食事に誘われていることも、すべてがどこか他人事のようにわたしから乖離していて、また、わたしが、女性としての魅力が乏しいにも関わらず、男の人から言い寄られるのは、ただ“若い女”である、こ…

夜、ひとり、よく知らない、千葉の海辺で、花火の支度をしていた。 100数名の子供たちのためである。 錆びたバケツの中にろうをたらして、ろうそくを立てる。 真っ黒い海から、風が吹いてくる。 気持ちいい。 大人はときどき、胸がいっぱいになる。 「海…

水色と、灰色のかたひも見くらべて、「このひもは、見えてていいの、いけないの」ブラジャー探すあなた 脱がせてくれればいいのに(答え:水色のほうがブラジャー)

人生は、わたしとわたしのお付き合い。そう思いませんか。どこまでいっても、わたしはわたしにしか出会えないんだもの。さみしい。

働きはじめて半年、やっと少しの余裕ができて、カーテンを買いかえた。刺繍の入ったレースのカーテン。わたしの買った、刺繍の入ったレースのカーテンが揺れている。 刺繍の入ったレースのカーテンは、わたしの思考をゆるさない。働きはじめてからの半年で、…

わたしのポケットの中には、子供が宝物だと言ってくれた、つるつるでぴかぴかの黒い石が

「この時間は、本を読む時間です」と閉じ込められた図書室の、本のなかには「学校なんて、行かなくていい」と書いてあること、気がつくのは、いったい何人の子供だろう。