アンドロギュヌス
図書室にまたいつものおとこのこがいる。図書室のソファの背もたれにうしろから寄りかかって雑誌をよむわたし。そのソファに座っているおとこのこが振り返ってわたしの頭をつつきます。さきに図書室からでたわたし、そのあとにでたおとこのこは、よろよろかかえたいっぱいの画材でドアにつっかえたわたしの頭をつっつく。 「持ってあげる」 って、わたしの木炭紙をとりあげて、下駄箱まではこびます。わたしが下駄箱をあけるのもままならない手荷物で、ばたんばたん音をたてて靴をとりだそうとするのをみて、 「あかちゃんをみてるみたい、取ってあげる」 って笑いながらいいます。わたしが、だいじょうぶ といいながらぽとんぽとんふたつ落とした靴を、しゃがみこんで拾おうとするおとこのこに、だいじょうぶだから と拾えないように靴を足で遠のけました。タイツの足を目のまえにさらしたことが今となってはいやです。散らばった靴を履こうとして、薄暗い昇降口の、ぺたん転んだわたしの、そばに立ったおとこのこは、 「-ちゃんはかわいいね」 わたしを見さげながらいった
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私生活をとろするきたなさをわすれました。センターにつかれたのです
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- 作者: 谷村志穂
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2003/05/20
- メディア: 文庫
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