前髪の長くて、顔は緑がかった不健康そうな背の高い男の人がいた。話しているとそのひとはものすごく情緒不安定で、自分の顔を針で刺した、いっぱい刺した。わたしが抜いても、いっぱい刺した。はりせんぼんのようになっても刺し続けるから「やめて」とわたしが言うと、わたしに背を向けてどこかに行こうとしたから腕を掴んで止めると、振り返った顔に針は一本もなくて、別人のように血色がよく目が開いていた。「また来る」と言って帰ろうとするそのひとをわたしは引き止めたくて腕を強く掴むけど、それでも止まってくれなかった。だからわたしが押し倒して口をつけようとしたら「毒があるから、毒についてはまた次に来たときに説明するから」と言ってわたしをどけて帰ってしまった。そのあとひとりでわたしはベッドのうえでまたいつか来る針の人のことを考えていた ら 目が覚めた。  気持ちの悪い夢に許された気がした。気色悪い夢に、ひとを追いかけることを久しぶりに許された気がした