もう夏の匂いがすごい。アスファルトは昼間のうちに帯びた熱を、夕方になってからもわもわ空気中に漂わせて、みんなをちょっとそこまで、の買い物に誘い出すよ。   なんだか目の病気まで判明してしまったわたしはふらふら眼鏡で外に繰り出す。肌のみにくい脚は長い白いスカートで隠して。脚は隠したけど、これ、びみょうにパンツが透けていそうだなあ。   わたしは半額の山うどを買った、5枚で98円の油揚げを買った。うどは酢水にさらしてから調理するといいそうで。   銅みたいな色の変な眼鏡のわたしの目は、地上150センチくらいにあるとおもっているでしょう、ちがうんですね、ほんとはもう自由自在に飛び回ってますよ、しゅんしゅん。駅では隣のホームから黄色い線の内側に立つわたしを見ている。山吹の花の前を通り過ぎるわたしを見ている。生協ではグラム98円の牛肉を買うか迷っているわたしの後姿を。生協で流れる鯉のぼりの歌に、つられて歌うおばさんを、横目で見るわたしを見ている。    たぶんこの陽気で今日はたくさん目が浮遊しているはずです。わたしだけじゃないみんなの主人公症候群が、今日はきっとたくさん発症されている