「装い」ってなんだ?
就職活動、わたしはこのあいだ、初めて会社説明会に行った。とりあえず家にあった妹のスーツを着た。真っ黒で、ウエストは少し締まっていて、ズボンの丈はヒールにかかるくらいだ。ブラウスの襟をスーツの外に出すとエラそうになった。それにかっこ悪いビジネスバッグを持ち、靴好きのわたしとしては考えられないダサさの靴を履いて、家を出た。   会場に着くと、みんなスーツを着て、老けこんでいた。 また、人々全員が同じ服を着るということに改めて気色悪さを感じた。中学や高校の制服だって、好きな刺繍の靴下を履いたり、もう少し自分に合った着こなしをできたものだよ。
自分をアピールしたり、見てもらう場において、全くその人を魅力的に見せない服を着ていくのが常識のこの国は、なんなんだろう。   「服装なんかで自己主張するな」と言うけれど、そういうことじゃない、全くそういうことではない。自分に合った「装い」をするということは、食べたり寝たりするのと同じくらい、全くふつーーのことだ。  今日は面接だからわたしのお気に入りの素敵な飾りボタンのついたブラウスを着ていこう。 と思うことと、 最近ビタミンが足りていないから今日のデザートには果物を食べよう。 と思うことは全く同じことだ。  自分を構成する要素を、自分が気持よく自分であるために、選んでいるだけだ。何の卑しさもない、全くふつうのことだ。
自分ではない格好をして、わたしはほんとう服装同一性障害だった。銀座の街も、ぜんぜんたのしくなかったよ。