「すごい似てるよね」「眼鏡してないときそっくり」と女の子のきゃっきゃとする声が、後ろから聞こえる。ひょっこり現れた小太りの男の子が、「ねえ、誰かに似てるって言われない?」と言うから、考えてみたけれど、よこためぐみさんか、あいこさましか思いつかなくて、「言われないよ」と答えると、「ほんとに言われないの?じゃあいい」と柱の後ろに隠れてしまった。どうやらずんどこべろんちょ的な何かに似ているらしい。    ハーフナーマイクは総叩き。ハーフナーマイクを総叩きにするには、お風呂上がりに、片手にビールでも十分の様子。クロスがもう少し低ければねえとフォローしていたのは松木。わたしがすきなのは今野。     みんななんだって好きに言う。    知らないうちに、わたしはひとの口上で、ずんどこべろんちょに似ていて、知らないうちに、つまらなくなっていて、沈みゆく舟になっている。 今日はわたしの瞼にグレーのアイシャドウが乗っていて、薄紫色にきらきらしていることは知るまい。そしてその裏側が病気だと言うことはもっと知るまい。ハーフナーのことも、なんにも知らない。知らないのが当然なんだから、伝えるしかない、というか、伝わったことのみが、事実なんだろうな。