精神だけが老化した青年とは、実は、あらゆる失敗の可能性を前にして足がすくんでしまった青年のことである。彼は口を開けば人生にチャレンジしない自分の生き方についていろいろ聞いたふうのことをいうかもしれない。しかし、真実は、彼は人生を前にして足がすくんでしまっているというごく単純なことなのだ。
また、あらゆる失敗の可能性を忘れている人は、いかに大胆に生きようと、無謀に生きたというだけである。あらゆる失敗の可能性を見すえつつ大胆に生きた人こそよく青春を生きたというべきだろう。

立花隆『青春漂流』