invasion

ああ燦燦とした世界のひとをまさかいれまいと、少女はぺたぺた頑強な壁をつくりあげてきた。分厚い壁に四方をつつまれて、少女は孤独だけど安心だった。
初めてひとがよじのぼってきたときの、少女の混乱といったらどうしようもなかった。きれいに真っ白に塗りこめた壁面に、床に、きたない足跡がつく。きたないけど、きたなさは人間らしさの象徴だった。箱の中心にぺたん座り続けてきた少女に、ひとがいまはじめてちかづこうとしている。アイロンをかけたシーツをぐしゃぐしゃにすることにいだくのは罪悪感か快感
少女は動転で異邦人に抵抗できない。箱の端までにじり逃げてはみたけれど、壁に押さえつけられてはなにもできない。抱きしめられるまま抱きしめられる 締めつけられるまま締めつけられる 潰されるまま潰される 知らない世界からやってきたひとの腕のなかで、孤独な自立から開放された安堵と、自分が汚されていくことへの恐怖のあいだでゆれる。だけど腕はどんどんくいこむ、ぎちぎち、少女の思考をにぶらせる   少女は悲しみの涙をながしたけれど、ひとはそれを安心の涙だと勘違いした
少女が真っ白いシェルターのなかで培ったものがいまばらばらと脆くも崩れようとしている。わすれたくない、胎内記憶のあるこどものようでありたい。だけど少女は濁りはじめてしまった もうとりかえしはつかない