狭いユニットバスには白熱灯ひとつ灯り、水色のシャワーカーテンが掛かって、お湯に浸かったわたしの肌は少し紫がかる。    手にダブのくさい石鹸をつけて、腕を組むような形で肩のあたりを洗って、手を戻しかけたら、こうやって、組んだ腕と胸のあいだに大きい泡の膜が貼った。吹いたら、シャボン玉ができそうだったので、ねえねえ見て見てそうしてこれ吹いて、と言いたかったけどひとり。    体中の痕に石鹸は沁みてじくじく痛くて、赤いような、茶色いような、黄色いような、いろんな痕は一様に醜くて、これはいったい罰だと思うんだけど何の罪に対するものだか、教えてくれたら、ちょっとは飲みこみやすいよ     石鹸の溶けた浴槽のお湯は白く濁って、熱いお湯が濁るのは冷めると透明になっちゃうけど、これは石鹸だからずっと白く濁って、わたしの肌も少しは綺麗に見えるので、ずっと沈んでいたら、読んでいた山田詠美の本はしおしおになった。