桜の花びらがたくさん落ちる池の水面には、ところどころ、花びらでできたピンク色の島があった。そのうちの一つに、一羽の鴨が突っ込んでいって、島がばらばらに散った。     「あの鴨、きみみたい」   わたしは、かさかさの枯れ葉があったら踏むし、霜柱があったらその上を歩くし、椿がきれいなままに落ちていたら拾って持って帰るし、でも虫がついてるのに気付いたら途中で捨てちゃうし、雪が降ったらまだ誰も歩いてない道に足跡をつけに行くし、オジギソウがあったら触るし、だけどそれがオジギソウに似た、オジギソウじゃない草だったら、これ、オジギソウじゃない、と言う。おもしろいから。    「なんであなたはしないの?」「もう大人だからしない」        いつまでも鴨でいられるようにしよう。昨日、久しぶりにマスクを外すことができて、そうしたら、もうお祭りみたいな、花火大会みたいな、夏の匂いがした。毎年来る、はじめて夏の匂いがした記念日、今年は5/14でした。