いつか前下がりのボブだったわたしは、今前上がりのボブです。いつかO脚になりたかったわたしの脚は、今もまっすぐなままで、今は、O脚になりたいなんて少しも思わない。  いつかのわたしが、あと何百メートルかで海に流れ込む川の、その河辺に連なっていた桜の木の間から漏れる光のまぶしさに細めていた目は、今も薄い茶色で、だけどまぶしいのは節電で電気を消した西武線の中に差し込んでくる強烈な西日なのです。  いつか気が変になるくらい好きだった男の子のことを、今はもうわたしはほとんど思い出すことはないけど、今までわたしが一番恋に盲目になったのは、間違いなくあの男の子へだったと、今は言うことができる。  部活が終わってから夜の海の浜辺に、裸足の脚を差し込んでいたいつかのわたしと同じように、今のわたしも、冷たい砂に脚を差し込む。制服じゃなく、長くて白いスカートになってはいるけど、同じように、脚を差し込む。    いつかのわたしに、今のわたしは負けているのか。わたしは、わたしじゃ、もうわかんない。