■

自分は実はこんな本を読んでいる、こんな映画を見ている、ただその行為の段階を人に知らせたい、という、ツイッターを見ていると、反吐がでて、仕方ないんだけど、なんで反吐がでるのか、うまく説明できない。匿名だとどうでもいいのだが、本人が特定された状態で、それをされると、どうも、ムカムカしてしまう。　たとえば、誰かの家に行って、本棚に、山月記があるのをちらっと見つけてしまったときの気持ちと、　誰かがツイッターで「山月記を読んだ。」と言っているのを見たときの気持ちとでは、全然ちがうのである。　　前者だったらわたし、まあ、と思ってそのひとをキラキラ見て、だけどまさか「山月記わたしも大好きです」なんて言ってはいけない、緊張感に包まれる。しかし後者は、「山月記を読んだ。」と言って向こうがキラキラとこっちを見てくるのである、わたしはこっち見るなと思って、なんにも、言いたくない。　　　　実家で山月記を読んでいるわたしを見た父は、ずいぶん満足そうな顔をしていた。