ハカセになりたかったという父の作業机の下には子どものころ拾い集めた化石や火山岩の入った箱と、試験官と粉の入った箱(この粉と水をどうにかすると泡がぶくぶくと立ち始めて、まるでハカセのような気分になる)が、いまもある。ああ、そこに生まれた子どものわたしは、そんな少年を忙しく働かせ、未来を奪ってしまったんじゃないかって、たまに思うと、涙が出る。