空中分解 選挙のポスター。不穏な音が聞こえる。高校の図書室、「どれでも持って行っていいよ」と言った司書さんの手元にあった蟹工船の装丁は、オレンジと黒ではなかったか。  踏切がわたしに喚き立てる!わたしは、結婚をしたくない。わたしは、わたしの人生が一番大事だから。だけど、自分が一番大事なら、ほんとうは、誰と結婚しても変わりないんじゃないかしら。そんなの、この大きなクマのような男の人が、かわいそう、わたし、自分が大事というけれど、そのために誰かを悲しくさせるのは非常にいやである。 これは怠惰な群像劇ではない!若者が生きることのびりびりとしたリアリズムを“怠惰”というかたちで表現するものはよくあるけれどわたしはあれがきらい。そういうのって世界を、生きることを、愛しているのかしら?って疑問です。   アピチャッポンウィーラセタクンの映像では、神さまか精霊か、白装束をたなびかせたひとがたが、草原で突然発火をして、つっぷしていた。それか、空中分解、どっちでも、いいけれど。