わたしは、世の中の人びとの中で、美術や文学を必要としているほうの人間なんだなあと、いまさらおもう。 みんなは浮かれてるって言いたいわけではない。みんなそれぞれ大変な人生で、それぞれの苦悩があるんだろう。だけどわたしのように、無駄にちかい苦しみをぐるぐると全身に巡らして、泣いてるくせにちょっと気持ちよさそうなのは、そんなに、世の中にたくさん居るわけじゃないのだな、ということだ。  地元の誰かと結婚して早く子どもを産みたいという友だちに、「なんで子ども産みたいの?」と聞くと、「なんで産みたくないの?」と言われた。なぜかしら。エステに行きたいという友だち。わたしはエステどころか、健康でさえいられたら、どんなに幸せかわからない。ファミレスの、喫煙席にいる、中学の同級生の男の子、ぷくぷくしていたほっぺたには今はひげが1ミリくらい生えて、なぜ、2人とも赤いキャップをかぶりゆるいズボンを穿いているのかな、わたしの友だちを自然に触る、その手は、いつかの運動会、むかで競争でわたしの肩に添えた手かしら。 みんな、わたしのすきなふるさとである。このふるさとで、一定の割合、かなり小さな割合で生まれるという、美術や文学を必要としてしまう人間、わたしはどうやらそのうちの1人だ。 さみしいな。わたしも、やさしいひとになりたい。    わたし、デートの最後、「ばいばい」と言ったら、もう振り返らないでズンズンと帰ってしまうのです。振り返ってにっこり笑顔をするのがはずかしいからです。みんなは、それがすごく上手みたい