人びとに平等に訪れる美しさがある。 桜や、雪や、夕日。有無も言わさず全員に与えられる美しさを前にしたとき、人びとは厳粛になる。   恐ろしさが訪れたときも同じようになる。地震が起こった、その恐ろしさがまだ生々しく残っていた数週間、人びとの身のこなしは、丁寧であった。ひとつひとつの動きに、重さがあった。それはもう、そのあたりのスーパーでさえ。   こういうところに神さまがいるのかな。人びとに、平等に訪れる、息を飲んでしまうようななにかのなかに。