帰省したその日、わたしはおじいちゃんの部屋に行き、おじいちゃんがベッドから落としたテレビのリモコンを広って、うまく動かせないその体勢をなおした。「またくるね」と言って部屋を出るわたしのほうを、おじいちゃんは、じっと見ていた。不自然に首をおこして、じっと見ていた。次の日の朝、お父さんが部屋に行くと、もう亡くなっていた。   ああわたしはいったい一度でも、世界の役にたったことがあるかしら。