妹が連れてきた男の人が高身長で菓子折りなんか持ってくる割とできたやつだったことが気に喰わなかったらしい父は、芥川賞の田中慎弥のニュースを見ながら「○○(わたし)はこういう人じゃなきゃだめ」と言った。私は笑ってしまった。 子どものころから科学や物理が大好きで本をたくさん読んだ父、ピンクフロイドやキングクリムゾンのレコードをたくさん持っている父、運動がからきしだめの父、せっかく合格した大学を中退して、医者の誘いも断り、小さくこつこつと働いている父。 父が父でなく、ひとりの人間として浮き上がってくることはとても寂しいけれど、この人は一体どんな人なのか、なるべくたくさん分かりたいと思う。