マーガレットハウエルの靴を買いに

マーガレットハウエルの靴を買いに というフレーズは、『オリビアをききながら』『あのこは綾波レイが好き』などのように、固有名詞を含んだフレーズとして、ちょうどよくあるまいか。ちょうどよいとおもう。  このあいだは、静物デッサンをする試験があった。静物デッサンなんて、ひさびさに描いたので、存外、存外というと、伊東みさきがやっていたスパ王のCMを思い出しますが、存外、たのしかった。わたしは高校生のころから、静物デッサンならガラス瓶と、布を描くのがすきだった。ガラス瓶の底と口の部分にきらめくこまかい光と、周りの色を反射するその側面。ヌードの女の人を描かねばいけないときは、それよりその足元の、ぐちゃっと踏みつけられた布のしわを執拗に追っているときなかば恍惚とした。  そうしてその試験を済ませたあと、マーガレットハウエルの靴を買いに、新宿へ行ったのです。わたしの足にあう、21.5センチの靴。しかし新宿はどしゃぶりの雨。高島屋でまさかマーガレットハウエルの靴をためしばきなんてできないような、ぐっしょりの足になってしまい、新宿眼科画廊にのみ向かい、黄色い電車で帰宅したのでありました。 だけど マーガレットハウエルの靴を買いに などというフレーズのある作品なんかいけすかないにきまってる。そもそもマーガレットハウエルの靴を履いている人にも若干いけすかないポイントを差し上げる