今夜は誰も寝てはならぬ


マイノリティの歌として理解されることが多いのかもしれないけど、求婚者を次々に殺しては泣いているお姫様の歌にもきこえる。

お姫様だから、美しいから、ただそのために求婚されるトゥーランドットとわたしたちのどこに違いがあるのか。ひとからすきだと言われて、自分自身がすかれているという確信や安心感をかんじられるひとが一体なにに身を委ねているのか分からない。お姫様でもなければ美しくもない、凡庸なわたしたちだって、トゥーランドットと同じくらい果てしない孤独のなかにいるはずじゃないか。だから、どんなにすきだと言われたって埋まらない孤独のひまつぶしに、わたしたちだって、なぞなぞくらい出題したいし、答えられないやつの首くらい刎ねちゃいたい。「毎夜生まれては明け方に消えるものは?」「それは希望」「赤く、炎のごとく熱いが、火ではないものは?」「それは血潮」そんな素敵な答えじゃなくてもいいからね、だから、教えてほしいんだけどね、どうして雪は白いのに、氷河は青く光るの?コップの水は透明なのに、どうしてたくさん溜めた湯船の水には青が湛っているの?考えるカラスっていう番組があるんだけどね、あの番組、問題だけ出して答えを教えてくれないの、だからわたしもう見るのやめたよ。それがわからないならじゃあ、どうして最近わたしの友達は一斉に脱毛をはじめたのかな。どうしてみんな男の人に毛を見られるのははずかしくて、エステのお姉さんに見られるのははずかしくないのかな。一時の恥というやつなのかな。それもわからないの、きみさ、割ったビール瓶口に突っ込むよ。(注1)と言ったら、「そのいきです!いつでも突っ込んでください!」と言われた。かなしくってとてもやりきれないので、かすみ草を生けた花瓶を顔の前において匂いをかぎながらパソコンを打っています。

(注1)