わたしのきれいだったとき。   中学の修学旅行、京都で、からりとした晴天の日、レンガ造りの同志社大学の前を5、6人で歩いた。青々とした緑が、レンガの壁から溢れるように飛び出していた。太陽の光でレンガ色も緑色も冴え冴えとして、スカートの白黒の千鳥柄は、目に痛いくらいだった。街中のCD屋さんから、矢野絢子の「てろてろ」が流れていた。わたしはその音楽に乗せて、レンガの前をぺたぺたと歩いた。すごく笑顔だった。    あのときの5、6人が、今ごろどんなふうに成長していようが、忘れていようが、あのときはあのときのまま、きれいにここにあるんだから、まだわたし大丈夫。大丈夫だよねえ。