ああ、半月の断面は、ぼそぼそしている。    魔女の宅急便で、キキが貨物列車で寝始めたあと、その列車の隣を、他の列車が通過していくシーンがある。小さい時から、ここがなんだか怖くて、なぜこのシーンを入れたんだろうと思っていた。      駅から離れたところにある踏切では、電車はすごい勢いでわたしの目の前を通り過ぎていく。自分にはどうすることもできない“決まり”が、ガタンガタンと冷たい音を立ててわたしの中身を叩く。    トラックが通り過ぎると、墓地がキラめく。すべての墓石の右側面にオレンジの丸が流れ、左側面には白い電灯が光っている。なにもないようにそびえる卒塔婆がアクセント。       パイプから池に水が注がれている。パイプの口から扇形に水面が波だって、10mくらい離れたところにある部屋の窓から漏れる蛍光灯の光を反射させる。白い三角形。それ以外の部分は真っ暗で、ああ、どこまでも沈めそうで、わたしは入水しようかと思った。     電車の黄色よりもトラックのオレンジよりも電灯の白よりも、やっぱり黒に包まれるのが、いちばん気持ちよさそうよ