「さすわさされるわそらええわ」

帰路、膝下丈のタイトスカートで脚がおおきく開かなくて、ここはアスファルトなのに、まるで雪の上を歩いているみたい、足を、ずぶ、ずぶ、と地面に沈ませるように、のそりのそりと歩いて、ほんとうに雪が積もっていたならきっと、ここでどさとつっぷしても気持ちがいいのだろうな、と、ごつごつ痛そうなアスファルトを睨んだ。   男の子が聞いたら、怒るだろうけど、わたしは男の子に生まれたかった。男の子に生まれて、心から期待されたり、心から落胆されたりしたかった。男の子に生まれて、自分の力で自分の魅力をつくりたかった。持って生まれた魅力を、持てあましたり、引きのばしたりするんでなくて。男の子に生まれて、自分の意思で欲望の対象を決めて、勇気をだして触れてみたかった。知らないうちに他人から欲望の対象にされて、触られるんでなくて。     だけどわたし、今朝、林静一の描く女の子みたいになりたかったんだって、思いだして、傷んだタイツを一掃、きれいなタイツをおろしたから、明日からもしゃんしゃん女の子で、いきるわ、痴漢されても、わたしのタイツはきれいだわ