君、竹さんみたいなのが本当の美人なのだ。あの、洗面台の青い電球にぼんやり照らされ、夜明けの直前の奇妙な気配の闇の底に、ひっそりしゃがんで床板を拭いていた時の竹さんは、おそろしいくらい美しかった。負け惜しみを言うわけではないが、あれは、僕だからこそ踏み堪える事が出来たのだ。他の人だったら、必ずあの場合、何か罪を犯したに違いない。女は魔物だなんて、かっぽれなんかよく言っているが、或いは女は意識せずに一時、人間性を失い、魔性のものになってしまっている事があるのかも知れない。
太宰治パンドラの匣

人間と魔物の境目をピョイピョイと、無意識のうちに飛び越えて、コントロール不能の魅力をまき散らす、そんな清潔な軽さをわたしもほしい。どうしてわたしは「わたしただのミーハー!」と言いきれないんだろう。どうしてわたしは自分というもののイメージを放り投げることができないんだろう。

お嬢様じゃないの わたしただのミーハー!
だからすごくカルイ 心配しないでね