「このあいだあなたのことを考えていてこんなことを思った」「このあいだこんなことをしていたときあなたのことを思い出した」などというようなことを伝えると、そのひとに嬉しそうにしてもらえることが多いので、わたしはよくする。たとえば「このあいだ自分でカレーを作ってみたら、お母さんの作るエビの入ったカレーってすごくおいしいなって思ったよ」と言うと、お母さんは嬉しそうにする。お母さんの作ったエビのカレーを食べている最中に「このカレーおいしい」と言うのと、その嬉しさの種類はまるでちがう。本当に思ったことをそのまま伝えて、そのひとを嬉しそうにすることができるのだから、みんなしたらいいとおもう。「前のほうが良かった」と言われるためにわたしがショートカットにするのは、この嬉しさを得たいからだ。その内容がポジティブなものであるかネガティブなものであるかはこの嬉しさにとって大した問題ではない。そのひとの頭のなかに自分に関する記憶が思い返されていることを感じられるかどうかが重要なのだ。それだから、「似合ってるね」では、駄目なのだ。相当ひねくれている。