しずく

わたしのしずくの原風景。 雨の翌日、校庭の鉄棒の下に、つららのように連なって、くっついていた、しずく。小さい鉄棒から大きい鉄棒まで、指でなぞって歩いて、落としていった。わたしがぜんぶ落とすんだから、誰もさわらないでね、とおもった。 喘息の吸入器の、蒸気が上手に吸えなくて、あごからしたたり落ちていった、しずく。拭うティッシュもタオルも見あたらなくて、ただ、小児科の壁の、アンパンマンやしまじろうの絵を目で追った。蒸気が出おわっても、看護婦さんはだれもこなかった。 もっとたくさんしずくの原風景があったような気がする。あとはわすれてしまった。