2013-12-13から1日間の記事一覧

女の人は絶望しない。世界のすべてのことなんて知らないから。男の人は絶望してしまう。世界のすべてを知っているから、あるいは知っているような気になるから。知らないから唄える歌があり描ける絵があるように、知っているから、知っているような気になる…

先生はたしかに「胸をよせろ」と言って腕を掴んだのだった。ムルソーが、ラスコーリニコフが、人を殺した日のように、真夏の金色の陽射しが真っ黒い影をつくって地面を焦がしていた。2人以外誰もいないプールの真ん中、アブラゼミの声と運動部の声、入道雲と…

彼は、彼のゴミだらけの部屋の、ロフトに通じるはしごに腰掛けた彼女におもわず、「掃き溜めに降りたった天使みたいだね」と言った。彼はつらくさみしい生活からの救済を、彼女は特別じゃない自分への意味づけを、宙に浮いた「天使」という言葉に見た。二人…