女の人は絶望しない。世界のすべてのことなんて知らないから。男の人は絶望してしまう。世界のすべてを知っているから、あるいは知っているような気になるから。知らないから唄える歌があり描ける絵があるように、知っているから、知っているような気になるからこそ説ける哲学があるんだろうな。 だけど世界を知ると同時に世界が自分に微笑んでいないことを知って絶望してしまう人がいるんだからかわいそう。その男の人は世界は君の手には及ばないよという救いも、及ばないことは何も君のせいではないよという救いも知らない。仕方ないから女の人は隣に座る。そうして「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」と詠むのだ。どうすることもできない絶望に、ただ投げかける優しい眼差しだ。