少し前、アトピーでいじめられた中学生が焼身自殺したというニュースがあった。  わたしも小さい頃からアトピーで、顔などには症状が出ないからそのことでからかわれずには済んできたけど、今ではもう慢性的で、成年性のそれになってしまっている。   その子の辛さには全く全く比べ物にならないだろうが、わたしにも、健康な肌を持つ人よりも尖った、びりびりと敏感な皮膚感覚というものがある。だから、アトピーでいじめられて、方法として焼身なんていう恐ろしい方法を選んだその子の気持ちが、少し理解できる気がする。   あまりにひどい湿疹が出たときというのは、わたしは「今日は肉が邪魔な日」と言って、自分の表面が汚らしく、人から見られていると消えたくなるし、自分の表と裏をぐるんと逆にしたくなるような、引き剥がしたくなる、脱皮したくなるような、なんで全わたしを代表してこの表面が外側に出てきているのか苛立つ。それを焼き払ってしまいたいと考えるのも、当然のことだと思う。   わたしはそういう皮膚のけばけばしい感覚を、マチエールというか、ものすごく唯一な感覚だと大切にしていこうと思い始めたけど、それをいじめられたのでは、全く皮膚は邪魔なものにしかならなかっただろう。   いじめられて、悲しさや怒りが積み重なって、アトピーは悪化するばかりの循環だったと思う。ほんとうに、ほんとうに可哀想で、わたしは偉そうに何度も思うけど、なんでその子を見つけてあげられなかったんだろう、見つけて、その子をほんとうに抱きしめてあげたかった。美しいマチエールの肌はさすってあげたかった。わたしが包んで、その子は中身になって、わたしが表面になってあげたかった。   お母さんお父さんの悲しさは想像を絶します